Gate25:学生バックパッカーの偏見

プラハの繁華街

 

目を覚ました俺は、ひどく体が重いことに気付いた。関節の節々が痛む。

 

 

それはドイツをでて2日目の朝だった。

 

 

 

 

どうやら風邪をひいたらしい。

 

気付くと同じ部屋に日本人がいた。

 

 

 

旅行している日本人に会うのは、ずいぶん久しぶりのことだ。

 

さっそくむこうから喋りかけてきたが、10分とたたずにトークは終わった。

 

 

 

全然合わへん。

 

俺が一番キライなタイプや。

 

こいつと喋ることは二度とないやろう。

 

 

 

 

どうやら彼は、京大の学生で卒業旅行ということで1人で旅行してるらしい。

 

1人やったら卒業旅行ちゃうやんけ。

 

 

 

そう思いながらも話を聞いていたが、

 

自分がいかにもすごいことをしている、

 

といった自信が口調にありありと滲みでている。

 

 

 

 

「チェコは長いんですか?」

 

「いや、昨日着いたばっかりやで。」

 

 

 

この時点でもう彼の心の中は、先輩顔や。

 

 

 

「これからどんなルートまわるんですか?」

 

「自分はどんなルートなん?」

 

 

 

てゆうかルートてなんや?

 

 

 

「僕はこれからチェスキー、ウィーン、ブダペスト、クラコフ、ワルシャワ、って感じです。」

 

 

「ふーん。俺は、はっきり決めてへんわ。理想はあるけど。

 

 とりあえず寒いから、はよ下の温いとこ行きたいってぐらいやな。」

 

 

「アウトはどこなんですか?僕はワルシャワが最後なんですけど。」

 

 

 

でた”アウト”。

 

 

 

 

「いや、そんなん決めてへんわ。

 

 とりあえず金なくなったらパリ行って、そっから考えよう思てるけど。」

 

 

「えっ?チケットないんですか?」

 

 

「ないよ。買う金ないねん。」

 

 

「そういえば、ここ来る前に金落として帰るチケットがないってゆう人がいましたよ。

 

悲惨でしたよ。」

 

 

「ああそう。」

 

 

 

 

この時点では、彼の心の中に哀れみの感情が入っている。

 

 

 

 

「じゃああんまり行きたいとこ行けないですね。」

 

 

 

 

なにゆうてんねん、こいつ。

 

 

 

 

「何日間の旅行なんですか?」

 

 

「特に決めてへんけど。」

 

 

 

 

絶対このタイプはこの質問してくんねん。

 

 

 

別にええねんけど、こいつらは長さで優劣を決めたがりよる。

 

そしてこいつは、敬語こそ使っているが明らかに俺を見下している。

 

 

 

「えっ?じゃあ日本でてどれくらいなんですか?

 

 僕はもうすぐ2週間になりますけど。」

 

 

 

「半年ぐらいかな。」

 

 

 

「えっ・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

こっから明らかに相手の態度が変わり、

 

怒涛の質問責めが始まったので、俺は鬱陶しいから部屋をでた。

 

 

 

 

・1人で海外を旅している

 

・いかに貧乏な旅ができるか

 

・いかに日本を長く離れているか

 

・いかに危険なところへ行ったか

 

 

 

 

こういう判断基準で優劣をつけるバックパッカーがいる。

 

タチが悪いのは、やたらこのことを自慢してきたり、相手に押し付けてくる。

 

そして学生の旅行者は、圧倒的にこのタイプが多い。

 

 

 

 

そうじゃないのもいるけど、俺は基本的にこんな理由から、

 

学生のバッパーを必要以上に毛嫌いしてしまう。

 

 

俺はこうゆうタイプがホンマ嫌いや!

 

 

 

 

 

数年前、初めて1人で旅行したときは、俺もこんなタイプやったけど。

 

 

 

 

俺の所持金あと1180ユーロ。

 

(約146,320円)