Gate15:アニキのカンボジア恐怖体験

アニキとは、1年ぶりの再会であった。

 

彼との出会いは、6年前にさかのぼる。
当時、高校を卒業したばかりの俺が働いていた
「シャ○バラ」というクラブというよりは、ディスコっぽい店で
出会ったことをきっかけに仲良くなっていった人である。

 

彼の名は、中山迅さん 30歳。
迅さんも海外が好きで、よく外にでて行く人である。
特に若い頃は、中国に3年いた後、
東南アジアをうろうろしていたらしいのだが、
カンボジアで筑紫哲也とコーヒーを飲んだことがあるという。

 

筑紫哲也ってゆうのは、「ニュース23」でてる人や。

 

当時のカンボジアは、ちょうどポルポト派が全盛期の時であり、
内戦の真っ最中であった。

 

カンボジアにいた迅さんは、とある安宿のロビーで日本人の老人と出会う。

 

その老人がカンボジア政府の軍隊に差し入れを持っていきたいのだが、
金がない、と言ってきた。

 

「反乱を起こしているポルポト派と戦い、
 消耗している政府軍を助けたいとは思わないか?
 もし、お前たちが望むなら一緒に連れて行ってやる。
 だから300ドル貸してくれ。」

 

迅はそのとき1人の若者と一緒であった。
名前は、ユウ。
迅がユウをみるまでもなく、答えは決まっていた。
ユウはフリーのジャーナリストだったのだ。
迅という男も好奇心の塊のような男であった。

 

その老人には、1人の付き人がいた。
付き人は、カンボジア人で、肌が浅黒く痩せており、拳銃を持っていた。

 

老人は、2人から受け取った300ドルで、
現地までの車と、兵士に届ける水や食料を用意した。

 

最前線の戦場までは、数百qと離れており、
途中いくつかの村で夜をすごし、日数を要した。
この長い道程の間、ユウと老人はウマがあわず、幾度となく大喧嘩をしていた。

 

戦場までの道程の2/3を過ぎたあたりで、
車ではとても通れないジャングルが目の前を覆っていた。
老人は、2人に吐き捨てた。
「いやだったら、帰ってもいいんだぞ。」
ここまで来て帰れるものか、と迅は車を降り、
腰に水の入った大きな壺をぶらさげ、背中にトリを数羽縛りつけ、
1人先に緑々とした木々に覆われたジャングルへ入っていった。
残りのメンバーも同じ格好で後に続いた。
ただ老人だけは、肩から機関銃をぶらさげているだけであった。

 

どれくらい歩いただろうか、
辺りは暗くなり始め、長くジャングルを歩いていた為、
迅は、すっかりと方向感覚を失っていた。
しかも、腰まで水深がある川の中を数時間前から進んでいる。
疲労の為、迅達は心身共にボロボロであった。

 

もうダメだ!
誰もがそう思った時、銃声が鳴り、迅の頬を銃弾がかすめた。
ついたのだ、目的地に。
ただ、彼らは目的地に着いても喜ぶことはできない。
そう、ここは銃弾や大砲が飛び交う戦場なのだ。

 

政府軍のテントを見つけ、老人が1人で交渉にいった。
様子をみていると、どうやらここに来るのは初めてではないようだ。
そして、水や食料を渡し終えたあと、老人とユウがカメラをまわしているのが、目に入った。

 

老人が迅に戦車に乗れと言っている。
どうやら、戦車が大砲を撃っている場面が欲しいようだ。
「アホか。撮影のために撃って誰かが死んだらどうすんねん。
 そんなことできるか。」
「今やったら、兵士いてへんからできる。はよやれ。」

 

誰も動かなかったので、老人が戦車に乗り込み、大砲を撃ちだした。
「イカれてやがる。」
この行為により、ユウと老人が大喧嘩をしはじめた。

 

その夜、老人は迅にそっと話しかけた。
「俺は、もう我慢できん。明日、あいつを殺す。
 お前は、助けてやるから安心しろ。」
あいつとは、ユウのことである。
確かに、今までの喧嘩は尋常ではなかった。
が、老人は殺すといった。あの老人ならやりかねない。
しかも、老人と付き人は、銃を持っている。

 

わずかな時間しか残されていなかった。
「一刻もはやく老人とユウを離さなければ」
迅は急いで出発準備をはじめた。

 

翌朝早く、2人は老人のいない隙を狙い戦場をぬけだした。
そして2人は、途中、近くの村へ行くトラックをみつけ、
荷台に乗り込んだ。
これでユウが殺されることはないだろう、と思い、迅達は安堵の眠りについた。

 

 

後ろから、老人が追ってきてることも知らずに、、、