ドイツ旅行記

Gate20:ドイツのファンキーな年越しの様子

そんな迅さんとドイツで年を越した俺は、
日本から一緒に来た後輩が帰国するというので
最後にもう一度会うことにした。

 

彼の名は、鈴木将人 21歳。
久しぶりに会った彼は、以前とは見違えるほど
考え方や顔つきが変わっていた。

 

もちろんいい方に。

 

あの鈴木がここまで変わるんや。
人ってしばらく見んあいだに変わるもんやな。
そんな驚きが強かった。

 

そして、俺も半年のビザが切れるため、
今後どうするか、決断しなければいけない時期になっていた。

 

幸運にも、今の職場で労働ビザを取得してくれるという、
お話もいただいた。
ドイツにもう少し居たい。

 

しかし、当初の目的であるパリでやりたいことを、
はやく叶えたいという思いも強い。

 

そして、迅さんが俺の部屋に置いていった、
”中欧”のガイドブックの存在も気になっていた。
チェコやクロアチア等、かなり興味をそそられる。

 

結果、ドイツを発つ事を選択した俺は、
パスポートを新しく変えてもらうことにした。

 

あの汚いパスポート持ってたら、
またどっかの国境で止められるわ。

 

領事館でパスポート受け渡しの際に、
日本人の係のオッサンが「次、どこいくねん。」
て、聞いてきた。
俺は、「パリ。 パリ行きますねん。」
と答えた。

 

すると、「うーん、それはちょっと難しいなぁ。」
そんな予想外の言葉が返ってきた。
「はぁ?パリは、ドイツちゃいますよ。」

 

そう言うと、
「いや、パリはフランスやろ。それはわかってるけど、
 ワーキングホリデービザというのは、ちょっと特殊で、
 期限がきれてから観光ビザへの変更は、
 よっぽどの理由じゃなければしてもらえないし、
 イギリスとアイルランドを除くEUには、
 シェンゲン協定が結ばれていて半年以上はEU内には
 いてはいけない事になってるから、あなたの場合、
 パリへは行かれへんと思うわ、行ったらあかんで。わかった?」

 

とりあえず俺は、そんな意見は無視することにした。

 

なんで、あいつはあんなえらそうやねん。
大使館の人間はなんでえらそうにものを言う奴が多いんや。
客にサービスしてナンボやろ?
おまえら、誰の税金で飯食うてんねん。
海外おるから俺、税金払てへんけど。

 

俺は、目的地を変更せずにパリへ、
パリへ行くことだけを考えていた。

 

そして出発当日、俺は仕事を辞め、すべての準備を整えて、
5ヶ月間住んだ部屋を後にした。

 

いつも犬の糞を踏んで、むかついて歩いていたその道を
もう歩くことはないんや、と思うと
なんとも言えない気持ちになっていた。

 

ドイツは、犬の糞の処理はあまりしよらへん。
したがって、いつもそこらじゅうにクソが落ちていた。

 

ハンブルクに別れを告げ、俺は駅へと向かった。
5ヶ月ぶりにバックパックを背負いながら向かったのだが、
明らかに遅刻していて、列車はとうに出発したあとだった。
しかも、それが目的地へ行く最終列車やった。

 

マジで?
ビザ今日で切れんのに。
夜、泊まるとこも探さなあかんやん。

 

そうして次の日、俺は今度こそドイツを出国した。
チェコ共和国の首都プラハ行きの列車に乗って。
パリ行きちゃうで!!